本研究所は、イノベーションとファイナンスを同時に扱おうという野心的な研究所です。

日本の組織(企業、大学など)は、ここ30年近く、世界の市場を圧巻するようなイノベーティブな製品・サービスの供給をかつてのように世界的に発信できずにいます。研究及び技術水準自体はとても高いはずにも関わらず、です。

例えば、ICT分野ではフォロワーの立場に甘んじ、先行者利益は享受できませんでした。ライフサイエンス分野では、COVID-19のワクチンを国内で生産できない事態に陥っています。
その理由として、金融供給サイド(VC, 銀行の民間セクター、加えて、金融政策)の問題、さらには事業会社の組織問題(企業内部での投資・財務の意思決定の問題、特に、新たなイノベーションへのリスクテイキングの低さ)、等々があるような気がしています。基本的な課題は、諸外国(特に米中)に比べて、資金提供が極めて低水準に止まっている点にあります。

本研究所は、まずこれらの諸問題に対して、日本のプレーヤーに対して、グローバルにも通用する処方箋を提供できないかと考えています。

一方、金融サービスにも世界的にイノベーションが起こりつつあります。IPOではSPAC(特別目的会社)による上場、ブロックチェーン技術に基づいた新たな通貨の可能性、SaaSによる資金提供・調達、等々が観察されています。金融システム及び金融サービスも中長期的には必ず抜本的に変容する状況となってきています。

つまり、イノベーションが、ファイナンスを変えるという、逆の因果関係にも目配りをしていかなくてはなりません。これが、本研究所の二つ目のミッションと考えています。


また、第三に、イノベーションを扱うからには、経営学及びイノベーションのためのレギュラトリー・サイエンス、エコシステム内における既存権益への対処のための制度論・政治学など、多様なディシプリンからの考察も不可欠です。これらのディシプリンからの研究もカバーしていければと思っております。

最後に、実務家の方々のパースペクティブにも目配りしながら、グローバルにも説得力があり、また、実務的にもインプリケーションに富む研究成果を世界でも通用するレベルで発信する研究所として、認知されていくことを目指します。


皆様から、ご支援賜われれば幸甚です。

研究所長:樋原伸彦